ごめん斉藤くん



ごめん。斉藤くん。
君の大好きな人を斬ってしまった。
私と土方くんとで奪ってしまった。

「…斉藤くん」
「……」
「…まだ怒ってるんですか」
「…別に」
「芹沢さんのことは謝ります。申し訳なかった。でも仕方がなかったんです」
「…俺は芹沢さんが好きだった」
「しかし…恩なら近藤さんにもあるでしょう」
「近藤さんには強引なところがない」
「は?」
「強引なところが好きだった…」
「そ…そうですか…強引…」
「それに芹沢さんには危険な魅力があった…」
「えー…えーと…強引で危険な魅力のある方が好きなんですね…」
「それに絶倫…」
「じゃ、じゃあ土方くん!土方くんだって強引で危険な魅力がありますよ。ね、土方くんにしましょう」
「…あの人には危険な魅力があるのか…」
「あります!しかも強引です!超強引!」
「…絶…」
「絶倫です!ええきっと!多分!」
「…芹沢さんは酒が強かった…」
「(うっ!)…さ…酒が強い方…がお好きなんですね…土方くんは…下戸ですね…」
「それに芹沢さんは学があった」
「(うっ!)…確かに…土方くんは…学は…」
「酒を飲みながら自分勝手に説教してくれないと嫌だ…」
「…変わってますね」
「やっぱり芹沢さんじゃないと」
「じゃあ!じゃあ私でどうでしょう!こう見えてザルですし学もあります。っていうか学しかない」
「…そうか」
「私ではダメでしょうか。わりと自分勝手ですが」
「叱ってくれるか」
「叱ります!」
「見下してくれるか」
「ここだけの話ですが、見下すのは得意です」
「そうか」
「はい」
「……でも…あんたは体が細い」
「(がーん!)体…細いのはお好みじゃないんですね…確かに芹沢さんはいい体なさってましたね…」
「もっと肉付きがよくて…俺を包み込んでくれるようなのがいい…」
「そ、それでは土方くんですよ土方くん!包み込んでくれますよ!気持ちいいですよ!ふっかふか!」
「…あの人は…目が細い」
「…目」
「もっと…芹沢さんみたいにクリクリっと丸いのが好きだ…」
「…えー…あの、私も笑ってると分かりませんが驚くとかなりクリクリしま…」
「(鯉口を切る)」
「わ!」
「ほんとだ…クリクリだ…」
「(びびびび吃驚したー)ね?私でいいでしょう!私にしましょう!」
「…強引」
「ですから強引なのは土方くんが」
「…酒」
「ですから酒は私が」
「…肉」
「肉は土方くんが」
「…学」
「学は私が」
「ふたりだ」
「…あのね斉藤くん、ちょっと我が儘ですよ。ひとりで全フォローなんて無理だ。用途に応じて使い分けてください」
「あんたと土方さんの間を行ったり来たりするのか」
「そうなりますね」
「面倒くさい…」
「あーもー分かりましたよ。できるだけ一緒にいますから」
「一緒に?」
「どうせ副長同士ですから大概ひとところにいますよ。そしたらほら、面倒くさくないでしょう」
「ほんとに?」
「ええ」
「ずっと?」
「ええ」
「約束するか?」
「組がある限りはね」
「…ならいい。あんたと土方さんで」
「…許してくれますか」
「……ああ」




ごめん斉藤くん。
嘘になった。


本当にごめん。


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